2.4GHz帯 vs 920MHz帯モジュール
ここでは、IoTやM2Mをはじめとするモノを無線化する際の920MHz帯無線と2.4GHz帯無線の特徴について解説します。
2012年7月25日から2.4GHz帯に加えて新たに920MHz帯がISMバンドとして割り当てられ日本国内で使用できるようになりました。ISMバンドとはIndustrial, Scientific and Medical Bandの略で主に産業、科学、医療向け用途に割り当てられた周波数帯域で免許不要で使用することが出来ます。
920MHz帯無線は別名サブギガ帯無線と呼ばれています。サブギガ帯無線とは1GHz以下の周波数帯のことを意味します。サブギガ帯という呼び名はWiFiやBluetoothで使用されている2.4GHzとの対比としてよく使われます。 具体的な数字で呼ばずにサブギガと呼ぶ理由は、2.4GHz帯は世界共通で使用できる周波数ですが、サブギガ帯は国により使用できる周波数帯が異なるためです。
最近ではサブギガ帯を使用したLPWA(Low Power, Wide Area)と呼ばれる通信速度を極限まで落として長距離通信を実現した通信規格が話題になっています。
新たに割り当てられた920MHz帯は期待が大きく、920MHzの説明の多くは従来の2.4GHzと比較して到達距離が長く、回折性が高いため障害物があっても回り込むので優れているとしています。 しかし、モノを無線化する際にはその他にも考慮すべき点がいくつかあります。
それぞれ一長一短があり、2.4GHz帯にも優れた性質が多くあります。920MHz帯無線と2.4GHz帯無線はそれぞれに特徴があり目的に応じて使い分けるものです。
一般に無線機能を装置に実装する場合、無線モジュールを使用します。従来の2.4GHz帯無線モジュールに加え920MHz帯無線モジュールが加わり選択の幅が広がりました。モノを無線化する際に920MHz帯無線モジュールと2.4GHz帯無線モジュールのどちらを選択するかのご参考にして下さい。
以下に920MHz帯無線と2.4GHz帯無線の比較をします。
アンテナの小型化
IoTやM2M向けのモノを無線化する用途では装置を小型化したいというニーズが強いため、アンテナは小型で性能が高いことが理想です。小型電池での稼働とアンテナの小型化は重要な要件です。
アンテナのサイズは使用する電波の波長で決まります。よって、2.4GHz帯は920MHz帯に比べアンテナを半分以下に小型化できます。
アンテナの長さは電波の波長によって決まります。波長は周波数の逆数ですので、電波の周波数が低ければ波長は長くなりアンテナも大きくなります。2.4GHzの波長は12.5cm、920MHzの波長は約32.6cmで、920MHzの波長は2.4GHzの波長よりも2.6倍長いです。例えば波長の1/4(1/4λ)で小型のホイップアンテナを設計する場合、2.4GHzは約3cm、920MHzは約8cmになります。小型センサー、小型無線タグ等の装置に8cmのアンテナは少し大きいかもしれません。
そして、アンテナを無理に小型化すると性能が犠牲になり、利得が低くなり通信性能が悪化します。同じ大きさで同じ設計のアンテナを比較した場合、920MHzのアンテナよりも2.4GHzの方が高利得になります。リンクバジェットはアンテナの送信と受信の双方で加算されますので利得の差は2倍で効いてきます。つまり、パスロスの計算で920MHzは2.4GHzよりも8.33dB余裕がありますが、アンテナを2.4GHzと同等のサイズに小型化して利得が4.2dB小さくなると2.4GHzとの差は相殺されてしまいます。
よって、装置の小型化が必要な場合は同じゲインのアンテナを920MHz帯よりも小さく出来る2.4GHz帯が有利です。
アンテナの選択肢が豊富
無線通信性能はアンテナに大きく左右されます。無線はアンテナが”命”です。2.4GHz帯はWiFiやBluetooth等、世界中で幅広く使われているため設置用件や用途に応じ様々なアンテナが市場に大量に出回っており、機能、性能、価格面で選択肢が豊富なのが長所です。指向性アンテナを用い電波伝搬のエリアに制限を設けたり、高利得アンテナにより飛距離を伸ばしたりできます。
一方、920MHz帯は2.4GHz帯に比べアンテナの選択肢が限られます。特に920MHz帯の指向性アンテナに関しては波長が長いため高利得なものはそのサイズが巨大になり、設置場所が大きく制限されます。
例えば 2.4GHz のパッチアンテナは、12cm 四方程度で構成できますが、920Mhz 帯では単純計算で 28cm 四方の面積が必要になります。
センサーネットワーク向け両偏波パッチアンテナ
アンテナは忘れられがちですが無線通信にとってアンテナはとても重要です。アンテナの位置と向きが通信に大きく影響します。
通常のアンテナはお互いの向きを揃えないと感度が悪くなります。これは電波の波のゆれる向き(偏波)が異なってしまうためです。しかし、IoTやM2Mのセンサーネットワーク向けの用途ではセンサーの設置条件によってはアンテナの向きを揃えることが困難ですし、ウエアラブル端末のように移動している無線端末の場合はアンテナの方向は不定です。
この問題を解決するためにセンサーネットワーク向けの両偏波パッチアンテナを開発しました。様々なモノが無線機能を持つ「IoT/M2M時代」に適したアンテナです。両偏波パッチアンテナは相手側のアンテナの向きが垂直でも水平でも良好な感度で通信できるため、様々なモノとの通信や移動端末との通信に最適なアンテナです。
モノの電波をキャッチする
- 両偏波パッチアンテナ(移動するデバイスやセンサー情報を正確にキャッチ!)
電池で長時間使用
モノの無線化では電池で長時間動作することも重要な要件です。コイン型電池で年単位の動作をさせる用途も多いためです。電池は待機時間、起動時間、ネットワークへの接続時間、通信時間でそれぞれ消耗されます。待機時間、起動時間の消耗は無線モジュールの性能で決まります。ネットワークへの接続時間の消耗は通信プロトコルにより決まります。通信時間の消耗は通信速度で決まります。
データ転送速度が速いほど、送信時間は短くてすみます。920MHz帯と2.4GHz帯を比較した場合、920MHz帯は通信速度が遅いため2.4GHz帯に比べて不利になります。線サーネットワーム向けの2.4GHz無線規格IEEE802.15.4規格は通信速度を250kbpsに定めています。これは数秒毎に多数の端末が通信するために必要な通信速度です。920MHz帯を含む通信規格のIEEE802.15.4gは複数の通信速度を定めていますが、現状で日本国内で最速は100kbpsです。よって、2.4GHz帯は920MHz帯の最速と比べても通信速度が速く省電力に有利です。サブギガ帯は周波数が低いため本来低速での運用に適しています。LPWA(Low Power, Wide Area)にはLoRaWAN、NB-IoT、SIGFOX等の複数の規格があります。LPWA(Low Power, Wide Area)では速度を遅くして長距離通信に特化させています。LPWA(Low Power, Wide Area)は通信条件が良い基地局を設置し、超低速で長距離通信をする際に適しています。
2.4GHzを使用した通信規格のIEEE802.15.4は消費電力、受信感度、端末収容数のバランスをセンサーネットワークに最適化しています。同じ2.4GHzを使用した通信規格のWiFi(IEEE802.11)やBluetooth(IEEE802.15.1)はネットワークに接続した後は通信速度が速いのですがネットワーク接続に時間がかかるためその間に電池が消耗しますので省電力運用には適しません。
コイン型電池で年単位の動作も可能な無線タグ
モノの動きをキャッチする無線タグ
TWELITE 2525A
加速度センサー
モノの動きをキャッチする。
加速度センサー無線タグ
TWELITE 2525A-トワイライトニコニコ
ゆれる力で電波を飛ばすエナジーハーベスト無線タグ
揺れる力で電波を飛ばす無線タグ
エナジーハーベスト(環境発電)でバッテリーレス端末を実現
小型太陽電池で動作可能な2.4GHz無線マイコンモジュール
送信休止時間とキャリアセンス
2.4GHz帯はデータの連続送信が許可されていますが、920MHz帯は通信時間や通信間隔に制限があり連続送信は許可されていません。
センサーネットワークは定期的に温度センサーのデータを計測するような間欠通信と、加速度計や振動計のように連続したデータを通信する場合があります。リモコンで使用する場合は、自由なタイミングでボタンを押しなるべく小さな遅延時間で信号を送信し続けたい場合があります。
また、データの再送時や省電力を実現させるためにも自由なタイミングで送信を開始できることは重要です。更に送信タイミングの制限はスループット(通信速度)やレイテンシー(遅延時間)を悪化させますので、ネットワークに参加できる端末数が減少したり処理時間が間に合わないケースが懸念されます。
2.4GHz帯は自由なタイミングで連続送信することによって電波干渉対策を行う事が可能です。920MHz帯では十分な対策を行うだけの時間の確保が容易ではありません。
2.4Ghz帯と920Mhz帯の電波使用法の考え方の違い
一般に利用が許されている特定小電力無線は、その周波数帯域に依らず干渉防止に対する対応が必須です。それぞれの周波数帯域により利用方法が定められています。
- 920Mhz帯では、電波法で送信前のキャリアセンスおよび送信回数に厳しい制約が設けられています。簡単にいえば、出来るだけ静かにしてみんなに迷惑をかけないように、という考え方です。つまり、干渉対策で出来ることが限られてしまいます。
- 2.4GHz帯では通信の制約はほとんどありません。いわば、周りがうるさい場合でも、伝わるまでしゃべり続けるといったことが許されます。また、2.4GHz帯は使用できる周波数領域が広いため、全域が利用状態にあることはまれで、すいているチャネルを選択することで通信可能です。よって、より高度な干渉対策を施せます。
920MHz帯の場合
920MHz帯の通信仕様はARIB STD-T108で規定されています。この中で使用制限として送信休止時間が規定されています。920MHz帯では連続通信が許されておらず通信する際には送信休止時間を挿入しなくてはなりません。よって、電波干渉が無い場合でも、この制限により自由なタイミングでの送信が不可能です。これは、使用するチャネル別に制限事項が異なり制御が煩雑になります。キャリアセンス時間も128us以上と5ms以上の2通りが定義され、それぞれ連続送信時間と1時間あたりに許された送信時間、休止時間が異なります。法に従った送信を行うための制御ソフトウエアの開発は複雑さを増すでしょう。そして、遅延時間が長くなるため端末数が多いネットワークでは輻輳が起き易くなります。
2.4GHz帯の場合
2.4GHz帯の通信仕様はARIB STD-T66で規定されています。送信休止時間の規定が無く自由なタイミングで送信を開始することができ、連続通信の制限もありません。複雑な仕様による制限事項の考慮を必要とせず、極めてシンプルな制御が可能です。少ない遅延時間(低レイテンシ)での通信が可能です。
データの再送や使用チャネルの変更等を自由に行う時間が確保できるため、干渉対策が可能です。
チャネルアジリティー (干渉回避アルゴリズム)
世界各国での使用
現状、世界共通で使用できる免許不要の周波数帯は2.4GHz帯のみです。920MHz帯は世界共通で使用できません。
ビジネスのグローバル化が進み、製品やサービスを日本国内のみならず海外に展開するケースが増加しています。例えば工場内の設備の監視制御システムの場合、国内工場と海外工場で同一のシステムが使用出来ることは大きなメリットです。
920MHz帯の場合
サブギガ帯は世界で共通して使用できる周波数が存在しません。海外では北米が915MHz帯、ヨーロッパが868MHz帯をサブギガ帯として使用しています。915MHz帯は北米、オーストラリア等の国でも使用可能で920MHz帯と一部重なりますが、全ての領域が共通しているわけではありません。以下の図のように、全ての主要国で共通している帯域幅は0.5MHzです。
2.4GHz帯の場合
無線免許なしで使用できる帯域(ISMバンド)として唯一共通して使える周波数帯が2.4GHzです。ビジネスの国際化が進み製品を海外で展開するケースが増加し、世界中で使える周波数として好まれています。国際的に2400MHzから2483.5MHzの83.5MHzと十分な帯域が確保されています。
現在、製品が世界中で使用される可能性がある場合は2.4GHz帯以外の周波数では適応が困難です。
2.4GHz帯は干渉し易いのか?
無線を使う以上、どの周波数を用いたとしても電波干渉は常に起こり得ます。一般に、同一周波数の電波を発信する無線装置が増えれば増えるほど干渉は起こりやすくなります。そして、干渉電波は無線機器に限らず様々な機器や機械から発せられます。2.4GHz帯の懸念事項はWiFiの混雑です。IEEE802.15.4の2.4GHz帯はWiFiも使用しており使用環境によっては混雑しています。しかし、5GHz帯を使用して433Mbps~6.93Gbpsの高速なデータ通信が可能な最新仕様のIEEE802.11acがリリースされたため、今後WiFiは5GHz帯への移行が進み、2.4GHz帯の混雑は緩和されます。
解説: IEEE802.15.4のデータパケットは非常に小さく(1チャネル幅2MHz、最大127バイト)、通信速度が速い(250kbps)、通信時間は最大0.004秒(4/1000秒)と一瞬ですのでパケットが衝突する可能性は極めて低い設計になっています。920MHz帯はIEEE802.15.4g/eで規定されている最大パケットサイズは2048バイトまで許されており、通信速度が100kbpsの時の通信時間は0.164秒、通信速度が50kbpsの時の通信時間は0.328秒となります。このような長時間通信を行い通信占有時間が大きな端末がネットワークに多数参加した場合、920MHz帯の方が干渉が起き易い状態になります。
電子レンジも2.4GHz帯を使用していますが、筐体内での調理を目的にしていますのでシールドも施されており外部の広範囲には電波はもれていません。しかも、調理時間の全てで電波を出し続けているわけではありませんので、IEEE802.15.4の小さなパケットは通過できます。IEEE802.15.4は狭帯域通信でノイズ消去性能が高いDSSS(スペクトラム拡散)を採用しています。一方、WiFiは1チャネルで使用している電波帯域(20MHz)が広く、更にパケットサイズも大きいため、至近距離では影響を受け易くなります。
920MHz帯は使われ始めたばかりですので、当然ながら現在は他の無線はほとんど使用していません。しかし、様々な無線機が920MHz帯を使用し始めれば他のシステムとの共存が2.4GHzと同様に課題になります。920MHz帯は2.4GHz帯よりも通信速度が遅く、最大パケットサイズも大きく、送信休止時間が規定されているので、2.4GHz帯に比べ高頻度の通信や多数の無線ノード間の通信では不利になり、920MHz帯が本格的に運用された際は2.4GHz帯よりも干渉問題が深刻になる心配があります。
一方、2.4GHz帯は使用帯域が広いWiFi同士での干渉は起き易いですが、狭帯域通信のIEEE802.15.4はパケットが小さく、マルチパスの影響を受けにくくノイズにも強いため混雑はおきにくい通信規格です。そして、WiFiは更に高速通信が可能なIEEE802.11acが策定され5GHz帯に移行しつつあり、2.4GHz帯の混雑は緩和されます。
原理として周波数が高い方が通信容量が大きいため大規模なネットワークが構築できます。周波数が高い方が一定の範囲内により多くの端末を収容可能であるということです。つまり、2.4GHz帯よりも920MHz帯の方が干渉及び輻輳が起き易いと言うことになります。
干渉対策はありますか?
2.4GHz帯は920MHz帯に比べ通信速度の速さとパケットサイズの小さい点も有利に作用します。 通信時間が短い2.4GHz帯のパケットは920MHz帯に比べ衝突が起こる確率が少なくなります。2.4GHz帯は920MHz帯のように送信制限や休止時間がありませんので、速やかなデータ再送によりエラーを訂正することが可能です。更に2.4GHz帯は920MHz帯に比べ通信速度の速い分、再送するチャンスが多く確保できます。つまり、2.4GHz帯は920MHz帯よりも通信プロトコルによる確実な干渉回避を構築可能です。
大規模ネットワーク構築
周波数が高い方がより多くの情報を伝送することが出来ます。よって、2.4GHz帯は920MHz帯よりも短い時間で通信が可能です。そして、2.4GHz帯には920MHz帯のように送信休止時間の制限がありませんので一定時間により多くの通信が可能です。結果として2.4GHz帯は920MHz帯よりも大規模なネットワークを構築可能になります。
通信距離
通信距離は周波数よりも無線モジュールの性能差に大きく依存します。どちらが良く飛ぶかは環境により異なりますが、基本的にリンクバジェットが大きな無線モジュールが良く飛びます。
通信性能はリンクバジェットという値で表されます。リンクバジェットは送信出力、アンテナの送信利得(ゲイン)、アンテナの受信利得(ゲイン)を足したものから受信感度を引いたものです。リンクバジェットが大きいほど長距離通信ができます。
まずは920MHz帯は2.4GHz帯よりも電波伝搬特性が優れているという根拠となるデータを解説します。グラフ「リンクバジェットに対する通信距離(自由空間)」は自由空間における920MHzと2.4GHzの通信距離の理論値(パスロス)の比較です。例えば、100dBのリンクバジェットでの通信距離は920MHzで2,594m、2.4GHzで995mです。同じリンクバジェットの場合、920MHzの通信距離は2.4GHzに対して約2.6倍長い計算になります。デシベル値で表すと920MHzは2.4GHzに対してリンクバジェットが8.33dB少なくても同じ距離で通信可能だということです。別の表現をすると920MHzは2.4GHzよりも自由空間において8.33dB減衰が少ないということになります。
しかし、実際に無線機器が理想的な自由空間で使われることは稀で使用環境は様々です。よって、2.4GHzと920MHzのどちらが良く飛ぶかは状況によって異なります。アンテナの高さや、障害物の状況等の影響で電波の経路は複雑に変化します。電波が通らない場所ではどの周波数を使用しても届きませんし、電波の到達に回析よりも反射が有効な場合もあります。特に室内の場合は壁、床、天井での反射が有効に作用する場合があります。
アンテナの高さは特に重要で通信距離を左右する大きな要素です。以下の図は電波の伝播を示しています。電波はアンテナ間を結んだ線に対して回転楕円体の形状で広がり伝播します。この空間をフレネルゾーンと呼びます。先に示した2.4GHzと920MHzの通信距離の比較はフレネルゾーンが完全に空間に浮いた状態で障害物が一切無い条件下によるものです。フレネルゾーンの一部にでも障害物があれば通信距離に影響します。
グラフ「アンテナの高さによる通信の影響」はフレネルゾーンを確保するためにはどれくらいのアンテナの高さが必要になるかを示しています。アンテナ間が100mの場合、2.4GHzは1.8m、920MHzは2.9mのアンテナ高が必要です。1000mの場合、2.4GHzは5.6m、920MHzは9mのアンテナ高が必要です。アンテナ間が3000mの場合、2.4GHzは9.7m、920MHzは15.6mのアンテナ高が必要です。つまり、920MHzは2.4GHzに比較して1.6倍のアンテナ高を必要とするということになります。
直進性が強い2.4GHz帯の方が920MHz帯よりもアンテナの高さが低い状態でフレネルゾーンが確保できます。
アンテナが低い場合はアンテナ間に何も無くても大地が巨大な障害物となります。
そして、920MHz帯は2.4GHz帯よりフレネルゾーンの径が大きいため障害物に影響される範囲が広いということになります。よって、サブギガの長距離通信の効果を発揮させるためには携帯電話の基地局のように十分高い位置にアンテナを設置し、高出力で通信する必要があります。
一般的にフレネルゾーン半径の60%を確保できれば通信を良好に行えるといわれています。グラフ「アンテナの高さによる通信の影響」はフレネルゾーン半径の60%とアンテナ間の距離の関係を表したものです。
一般的な事務机の高さは70cmですが、この高さに無線端末が置いてあると仮定します。高さ70cmでフレネルゾーンの60%を確保できる距離は2.4GHzで約44.5m、920MHzで約17mです。2.4GHzは920MHzよりも2.6倍長い距離となります。
人が胸の高さで無線端末を持っていることを仮定すると、高さは約1mとなります。高さ1mでフレネルゾーンの60%を確保できる距離は2.4GHzで約90m、920MHzで約40mです。2.4GHzは920MHzよりも2.25倍長い距離となります。
室内で使用する場合は壁や床、天井で閉ざされた空間で電波が回折する隙間はありません。よって、センサーネットワーク用途で電波到達に最も重要な要素は回折性ではなく透過性です。
以上のように、通信させる際に電波の伝播に影響する要因はいくつかあります。920MHz帯は2.4GHz帯に比べ自由空間での損失は小さいですが、モノを無線化する際に実用的なアンテナのサイズやアンテナの高さを考慮に加えた場合は2.4GHz帯が有利な場合が多くあります。指向性の高利得アンテナにより飛距離を伸ばしたり、指向性アンテナで伝播エリアを制限したり、ノイズの影響範囲を狭めるためには波長の短い2.4GHz帯が920MHz帯よりも有利です。
まとめ
M2M、IoTをはじめとするセンサーネットワーク機器に使用する場合は920MHz帯に比べ2.4GHz帯が有利な点が数多くあります。2.4GHz帯はグローバルに製品展開ができる点、アンテナサイズが小さいため製品の小型化ができる点、通信速度が速いため低レイテンシの通信ができる点、送信休止時間が無いので連続通信ができたり干渉回避対策に有利な点など多くのメリットを持ちます。
以上、様々な項目に対して2.4GHz帯と920MHz帯を比較しました。920MHz帯と2.4GHz帯のどちらをご使用になるかのご参考にして下さい。
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